協働ストーリー リリムジカ
「音楽の場づくりを通じて、高齢者のQOL向上に取り組むリリムジカ」

リリムジカでは、介護を必要とする高齢者向けに、参加型の音楽プログラムを実施している。

SVP東京との協働2年間を、2014年に終えた。

協働の2年間に、Vチームのリーダーを務めた入部氏に、協働のお話を伺った。

入部氏

小林「リリムジカとの協働が終わってから少し時間が空いていますが、LPとして2年間関わられて、まずは大きなところで感想をお願いします。」

入部「そうですね、協働は確かに2014年で終わったのですが、実は私、未だにアドバイザーというかたちで毎月の経営会議に顔を出しているんです。自分たちで作った道筋が少しずつ太く、しっかりしてきているのを近くで見続けてこられたのは嬉しいですし、すごく手応えを感じています。」

小林「当時のVチームと協働スタイルについて、教えていただけますか?」

入部「Vチームのメンバーは、私を含めて全部で9名いました。対するリリムジカ側は、スタートした2012年時点で3名。共同代表として柴田萌さん、管偉辰さんの2名と、現場で音楽を担当するミュージックファシリテーターが1名、という構成です。

協働のスタイルが、月1回の定例ミーティングだったのですが、この場が同時にリリムジカとしての経営会議となっていきました。固定のオフィスを持たずに日頃からリモートでコミュニケーションを取りながら活動していたリリムジカでは、代表2人の間でも十分な意思疎通が図れていないことも時折ありました。顔を合わせてコミュニケーションをとり、かつ細かい言葉の綾や解釈のずれを、必要な場面では我々が翻訳しながら一緒に考えていくという、よい流れをつくれたと思っています。」

リリムジカ合宿2014年(一番手前:リリムジカ代表取締役 管氏、右端:入部氏)

小林「改めて、リリムジカの取り組んでいる事業内容と、当時のリリムジカの課題について少し解説いただいてもいいでしょうか。」

入部「はい。簡単にいうと、リリムジカは、高齢者の心と身体の健康のために『参加型音楽プログラム』を実施している団体になります。高齢化が進む日本には介護施設は増え続けていますが、働き手が不足している施設も少なくなく、介助を要する場面以外で入居者・利用者と職員が向き合う時間は限られています。結果、施設内ですることがないまま漫然と日常を過ごす高齢者が増え、意欲・体力の低下につながるという悪循環が生まれてしまっています。

リリムジカは、そうした介護施設に定期的に出張し、参加型音楽プログラムを実施することによって、高齢者の方々が自分らしくいられる場をつくり、日常生活の質の向上と介護現場の活性化を目指しています。

当時の課題としては、経営陣の経営・マネージメントスキルの向上がひとつ。更には、ボランティアの音楽演奏とは違う、自社のサービスの強みをうまく説明しきれていない、といったことがありました。」

小林「具体的に、どのような形でVチームは協働を進めていったのでしょうか?」

入部「そうですね、まずはいきなり戦略ではなく、リリムジカの事業にとって何が大事か、というところから話し合いをスタートしました。今まで、限られたメンバーだけでしか話していなかったところに、我々のような多様なメンバーが参加したことによって、新しい視点を加えることができ、価値を出せたと感じています。

例えば、当時リリムジカの事業はまだ小さいものの、プログラムのクオリティは高く、一度導入した施設のリピート率は非常に高い、という事実がありました。これはビジネス的に大きなプラス材料ですが、彼らはそれが強みだということに気づいていなかった。課題発見→解決というプロセスも大切ですが、既存の強み・できていることを拡大する、ということも協働の大きな成果だったと思います。」

小林「なるほど。まずは彼らと同じ視点にたって、一緒に議論をするところからスタートしたのですね。協働を通じて、Vチームメンバーのバックグラウンドが活きた、というような事例はありますか?」

入部「パートナーには、経営経験がある人達もいたので、先ほどお伝えした毎月1回の経営会議は、経営者目線で中長期の経営戦略策定と、そこに紐づいた直近に実施すべき具体策のブレスト、その中での優先順位や役割分担決めまでを行い、四半期毎のプラン策定→実行→チェック、というサイクルを自然に行えるように習慣づけていきました。

また、デザイナー系のバックグラウンドを持つパートナーを中心に、各種広報素材の整備も行いました。他の音楽ボランティアの違いというのが『体験してみたらわかる』では伝わらない。営業という観点で、どうしたらこの価値をわかってもらえるかを考え、ロゴのブラッシュアップに始まり、パンフレットの改訂、動画コンテンツの作成などに取り組みました。さらに、弁護士であるパートナーが、導入施設との契約締結などリーガル面を実務的にサポートしてくれたことも心強かったです。」

小林「多様なバックグランドを持つ人の集まりという、チームならではのサポートの強みが、うまくマッチした協働だったようですね。また、協働が終わっても、入部さんのように個人的に応援し続ける人も出てくることを考えると、SVP東京の協働の持つ意味、可能性というのはより広がりを見せてきますね。今日はありがとうございました。」

リリムジカスタッフとSVP東京のメンバー(2014年)