【前編】15周年企画 第一弾 ~「協働」によって生まれるもの、生まれないもの~

「そういえば今日って、プレミアムフライデー?」

・・・なぜこの日を選んだのかとクレームが聞こえてきそうな6月最終営業日の金曜夜。案の定、仕事が終わらずにバタバタと19時を過ぎてからSHIBAURA HOUSEに到着する参加者が多い中、記念すべき15周年スペシャルダイアログシリーズの第一弾が開催されました!

ゲストには、2012年から2年間協働したクロスフィールズ代表の小沼氏、そして2013年から2年間協働したe-Education代表の三輪氏をお迎えし、当時の協働を振り返って何を思うか、またあのときの2年間を経て今、団体がどこへ向かおうとしているかを、ざっくばらんにお話いただこうという、非常にゆるいSVP東京らしいスタート。

まずはそれぞれの団体についてお話していただきました。

 

 

 e-Education 三輪開人さん

「最高の授業を世界の果てまで届ける」

というスローガンの下、映像教育モデル(e-learning)を途上国展開するという事業を行っている、e-Education。当時、Bangladeshで目の当たりにした若者たちの現実は、夜になると街灯の下で本を読まなければ勉強できないような、過酷な学習環境。圧倒的に先生も足りていない状況を打破する方法として日本から採用したのが、東進ハイスクールのモデル(カリスマ講師の授業を映像で勉強できる)だった。

 

「なんと1年目で、Bangladeshの東大とも言われるダッカ大学に1名、合格者が出たんです!」

1年目からダッカ大学への合格者を輩出したニュースは瞬く間に広まり、現地の新聞にも取り上げらるほど注目を浴びる。そしてその後もe-Educationは約9年間活動を続けており、延べ17000人以上の生徒をサポートし、9年連続でNo.1国立大学であるダッカ大学を含む難関国立大学へ合格者を輩出し続けている。また、合格できなかった者たちも、自分に自信をもって生きられるようになり、自ら社会課題に取り組んだり、接点を作って高校生に話をしてあげたりしているという。 e-Educationのサポートを受けた生徒たちは、社会課題を解決するリーダーへと成長しており、受験勉強のその先を見据えた教育革命を目指している。

 

「SVPに応募したのは、確か2012年のことだった思います」

e-Educationの事業に共感し、チームに入ったSVP東京のパートナーは10名。しかし、団体側は代表になったばかりの三輪さん1名で、しかも半分は日本にいない状態。当時は、学生の任意団体としてスタートしたe-Educationが事業を発展させるにあたり、組織として社会的な信用を高め、認知度を上げていくことが重要で、課題は山積み。

協働では、e-Educationの成長戦略をしっかりオペレーションに落とし込むことができるよう、パートナーと団体側の学生インターンとが一緒になって、「組織づくり(NPO法人化)」「WEBマーケティング」「ファンドレイジング」などの小タスクチームで作業を進めていった。各チームとも月間報告書をつくって1ヶ月くらいのスパンでPDCAを回しながら、毎月の全体ミーティングで進捗を確認し合い、少しずつ組織運営の基盤を強化していった。

成果が出るものも、出ないものもあったが、三輪さん曰く、「悩み切った2年間だった」と。

 

「何が一番良かったかと言われると、SVP東京のおかげで、アクセルを踏み続けることができたということですね」

当時は、やりたいことが多すぎて、協働の1年目に立てた課題(目標)が7つ、うち達成したのは4つ。2年目に設定した課題は15個、うち達成したのは7つ。KPIは全部達成できなくてもいいと思っていたという。アクセルを踏み続けて暴走しがちな自分の傍に、常にブレーキを踏んでくれるパートナーの方々がいてくれたのは本当に心強く、結果的に、優先的に取り組むべきことに絞って限られたリソースを投入することができたと。

2年の協働が終わるとき、いくつかのことを泣きながらチームに対して誓ったという。例えばその一つは、活動を絞る(当時12か国に展開していた)ということだが、現在は目標としていた6か国から更に絞り、4か国に集中している。結果、スタート地点だったBangladeshでは、今までに200人以上の若者が、難関大学に合格している。

今、中国の深センでは、教育用のタブレット開発に関わっている。フィリピンでは、日本で言う「教育省」のようなところに、e-Educationのオフィスを作ってもらった。事業の価値を認めてもらい、セクターを超えて企業、行政、団体がつながるところに、ソーシャル事業の面白さ、美しさがある。

 

「大丈夫ですよ、と言ってくれたのが大きかった」

当時のSVP東京との協働を振り返って、三輪氏はこう語る。お互いがお互いを知る機会を作る、ライフストーリーを見せる場が必要で、あまり遠慮はいらない。縛られず、もっと図々しく、お互い踏み込んでいいし、KPIにも縛られ過ぎない方がいい。

e-Education は現在、スタッフ7名まで大きくなっている。当時学生インターンだった一人が、なんと今年からSVP東京のパートナーになっており、別の学生インターンは今、7名のうちの1名として活躍している。三輪氏自身は2017年から、Bangladeshに拠点を置いてこの事業に身をささげている。e-Educationの活動を通じて大学に入り、卒業した人たちが徐々に増えてきて、彼らが高校生たちに話をするという流れができつつある。学生向けの奨学金制度を作った卒業生もいる。自分たちが始めた小さな活動が、徐々に大きなうねりを創り出そうとしている。

 

 

 

クロスフィールズ 小沼大地さん

 

「留職」という新しい言葉を作ったクロスフィールズ。

企業の社員を、3か月間という期間、海外のNGOなどに送り、プロボノをしてもらうという仕組みを提供している。派遣する先の団体に対する貢献というところと、送られる社員の成長というところの、Dual Missionという点では、SVP東京の仕組みと似ている。この「留職」というプログラムを通して、何を成し遂げようとしているのか?

 

有名な、ノミの実験の話がある。瓶の中にたくさんのノミを入れておくと、蓋にぶつからない高さしか跳ばなくなる。そして、しばらくその状態をキープすると、瓶から出しても、瓶の形で跳び続けるという。

「これが、日本の現状」と小沼氏は言い切る。いったんどこかに所属してしまうと、そこに留まって、停滞してしまう。この状況をなんとかしたい!

実はこのノミの実験には続きがあるという。瓶の形で跳び続けているノミ群に、1匹だけ新しいノミを投入すると、瓶の形が崩れるのだそうだ。小沼氏は今、クロスフィールズの事業を通じてこの、「ノミを投入する=変化を起こす」ということをやろうとしている。

 

 

「コミュニティが大切なんです」

2012年、SVPとの協働開始時、まだアイデアしか無かった状態だった代表の小沼氏。事業がスタートしても、もちろん契約はゼロ。そこから6年で、社員は18名。契約会社は30社を超え、留職プログラムを利用した社員の数は、2017年までで142名になる。そして今、「留職」を経験した人たち同志のコミュニティが大きく育ちつつある。このコミュニティが新しいガラス瓶になって、世の中を変えていくのではないか、こういう場を作っていくのが大切なのではないか、と感じているそうだ。

当初のTOC(Theory of Change)は、「個人が変われば、会社が変わり、社会が変わる」としていたという。しかし、プログラムを利用した社員は、まだ30代。本当に留職だけで社会を変えられるのだろうか?という疑問が出てきたのが2年ほど前。戻ってきた社員が変化を起こすには、その会社そのものが受け入れる土壌を持っていなければいけないのではないか・・・?

新しいレバレッジポイント:経営陣を変える

新しい事業:フィールドスタディ

例えば、江崎グリコ社に関しては、本部長など総勢20名に、フィリピン、ベトナムへの1週間の社会課題体験ツアーを組んで参加してもらったという。今後、長いスパンで会社として何を目指してやっていくべきかを考える1週間。元々「おいしさ」と「健康」がテーマだったのが、このフィールドツアー後、徐々に「健康」シフトをしつつあるという。会社の姿勢が変われば、その先で、社員に対して「留職」をインストールしたときの影響、変化は各段に違ってくるはず、と力強く語る。

 

協働を振り返って、何が価値だったかを問われて、小沼氏は3つに整理をしてくれた。

1.創業期の明確なマイルストーン設定を手伝ってくれた

2.7年間続く事業パートナーの獲得ができた。当時のパートナーの一人は今、役員になっている。

3.エコシステムを一緒に担えている関係になれた。SVP東京の代表とは2ヵ月に1回やり取りをしている。

→一緒にソーシャルセクターを作っていく仲間、という認識だそうだ。

 

これからの15年間を想って。

「ソーシャルセクター、結構な踏ん張りどころでは?」

国際協力など、どこも厳しい環境で、いい人材はなかなか来てくれない。

メルカリなどのテクノロジー系スタートアップも、皆、「社会を変える」ということを考えて事業を作っている。我々も、「ソーシャルだから仕方がない」と、変われずに今の状況に甘んじていると、15年後もただ年くってるだけになりかねない、と危機感を伝えたところで、小沼氏のパートは終了。

 

 

 

(⇒後編へ続く)