パートナーストーリー Vol.9 伊藤氏
「いつでもそこにいてくれる、という安心を感じてほしい」

Vol.8に引き続き、若手キャラの筆頭、通称いとーくん。

2018年入会当時はまだ26歳。年齢が若いということに加えて、そのソフトな人当りとフットワークの軽さから、愛されキャラとして内部でも存在感を出している。

パートナーには多動な人が多いが、彼もこの2年間は、公私ともに激動だった。結婚、転職、東京から大阪への引越し、そしてつい最近、父親デビューもしている。

若い、若いと強調するのはインタビュアーのただのひがみだが、実はいとーくん、ソーシャル系バックグラウンドは他のパートナーに比べてもユニークで、しかも深い。

ソーシャルセクターに初めて関わったタイミングは2014年までさかのぼる。単位もほぼ取り終わって時間があったという大学4年次。内定をもらって就職活動も落ち着き、興味ある分野でインターンをしてみようと思い立つ。大学2年次にタイに留学していた経験や、バイトで塾講師をしていた経験から、途上国支援や教育関連のことに興味があり、たどり着いたのが、NPO法人e-Education(※SVP東京の過去協働先)。

e-Educationは、バングラデシュを始めとする途上国に、e-learningを使って教育支援を行っている団体だ。「経験を活かして、タイでプロジェクトを立ち上げたい!」とアピールするも、考えが甘いと団体の代表に一蹴されてしまう。

そもそも自分は何をしたいのか?本当にこの就職先でよかったのか?

e-Educationのインターン面接をきっかけに自らに問い直したといういとーくんは、「トライセクター(民間・公共・社会)を通じて、社会をより良くする仕組みを実装すること」という明確な目標にたどり着く。

就職活動もやり直し、新卒で就職することになる某総研系コンサル会社から内定をもらう。

そして再度、代表に会いにいき、国内事務局担当として採用される。

当時、ちょうど前代表から代表交代のあった直後だったe-Education。

代表の他に国内で活動していたのは、大学生数名と、社会人経験者が1名のみ。

やることはいくらでもあったと振り返るいとーくんは、広島から東京に出てきて代表の家に泊まり込み、それから約半年間、力を尽くして働いたという。

とにかくリソースが何もかも足りていなかったため、なんでもやった。

ファンドレイジング、支援者集め、広報、学生インターンの採用、経理、問い合わせ対応・・・そしてミャンマーやバングラデシュの現地の活動も手伝っていたという。

この、e-Educationでの国内事業をやっているときに、ソーシャルセクターにおける「中間支援団体」というものの存在を知ったという。

社会起業家の登竜門とも言える、ETICの社会起業塾。

NPO向けのマーケティング研修プログラムを提供する草莽塾(そうもうじゅく)。

そして特に運命的な出会いが、SVP東京だった。

当時のSVP東京の協働は、分科会という形でテーマ毎に担当がついてアドバイスを受け、定例ミーティングを毎月実施するという形で進む。その傍らで、Facebookのメッセンジャーで常にやり取りをしており、何かあるととりあえず相談・・・という形が、協働が進むにつれて出来上がり、SVP東京は「何かあったら相談できる存在」になっていた。当時、担当していた活動は未経験なことばかりだったため、すぐに相談できる存在がいることはこれ以上の安心感は無かったという。

卒業までの半年間は怒涛のような毎日を過ごし、4月からは予定通り就職。

とはいえ、その後もプロボノという形でe-Educationとは関わりを続け、休みをとって自費でバングラデシュまで出向くこともあった。

そして社会人3年目になり、兼ねてから考えていたというSVP東京への参加を決める。

自分なりのソーシャルセクターへの関わり方として、NPOに就職するというよりは、外側からサポートする形がしっくりきており、また、個人としてではなく、中間支援団体という「組織」として、チームとして団体をサポートする形で活動したいと考えたという。

「当事者の人たちの困り具合が深ければ深いほど、関わりたいという衝動に駆られるんですよね。」

そんな彼が最初の協働先として選んだのは、2018年に採択された団体のひとつ、NPO法人PLAS。アフリカでエイズ孤児の支援を行っているPLASの活動は、現地で緊急性の高い課題に取り組んでいるという点で、彼の志向にマッチしていた。加えて、実はe-Education時代にPLASから教えてもらうこともあったという接点があり、今度は恩返しをしたい、という気持ちも後押ししたという。

一次選考を通過し、仮Vチーム(選考を通過するまでの仮の協働チーム)に入って率先して活動すると、無事に選考を最後まで通過し、協働先に選ばれる。そのまま10人以上いるVチーム(協働チーム)メンバーのLP(リードパートナー)となる。

「自分がやってもらってうれしかったことは、自分もやろうと心掛けていました」

当時e-Education時代のSVPパートナーが、何かあったらすぐに相談できる存在だったため、今度は自分がそのような存在になれるようにと心がけていた。

協働のメインメニューは全体戦略やファンドレイジング。転換期に協働がスタートし、改めて団体のミッション・ビジョンを再検討するフェーズを一緒に考えられたというのは良い経験になった。

また、協働1年目の終わりごろ、たまたま転職のタイミングということもあったが、自らアフリカの現地に赴いて、実際の活動を見聞きしてきたというとんでもない行動力も発揮した。

LPだったということもあったが、安定して存在感を出し続けようと心掛けていたため、定例会はほぼ全て参加。Slackで相談があったらすぐに反応する・・・など、信頼構築のためにかなり努力をしていたが、それは、当時e-Education時代のSVPパートナーにしてもらってうれしかったことだという。

「さすがに、結婚式前日のミーティングは休みましたけどね(笑)」

最近は小さい子供がいるので、あまり活動できておらず、Vチームにも入っていないが、PLASやe-Educationを含め、これまで関わった団体へは引き続き関わり続けたいと思っているとのこと。団体側も経験している彼からすると、団体側の苦悩を100%理解するのは不可能だという。それでも、10%でもいいから寄り添って、一緒に悩んであげたい。何かあったら相談できる存在として価値を出したい、と力強く語ってくれた。

「なんでも楽しめる人がいいですね!」

定番の、どんな人にSVP東京をお薦めしますか、という質問に対する回答だ。

基本、皆がボランティア。自分からアクションを起こさないと、何も生まれない。

ある程度の「ノリ」は必要という。

「~なことやってみませんか?」とか、「私、それ手伝います!」とか。

「大変なこともあるが、何事も経験と思って楽しめるタイプの人にフィットするでしょうね。あと、多少前のめりの人とか(笑)」

多様性重視で、個人的には同世代とか、もっと若い人にも来てほしい。

20代だからできない、とかは無い。やっていく中で、自分の役割を模索して、自分なりのポジションを見つけられることができれば、楽しみながら活動ができると、力強く語ってくれた。

(聞き手:桐ヶ谷)