協働ストーリー 株式会社ピリカ
「オールスター人材のサポートが事業を加速させる」

2017年に協働を終えた株式会社ピリカ代表の小嶌氏に、協働に至るまでの経緯から、協働の様子について話を伺った。

「お金を払っても得られないようなサポートを、お金を払わずに得ることができてしまった」

そう話すのは、2015年~2017年の2年間、SVP東京と協働を行った株式会社ピリカ代表の小嶌氏である。科学技術の力でゴミの自然界流出問題をはじめとする環境問題を克服することを目指すピリカは、2011年に京都大学の研究室から生まれた。

主に、ゴミ拾いSNS「ピリカ」や、ポイ捨て調査・分析の「タカノメ」、プラスチック流出調査・対策の「アルバトロス」といった事業を通じて問題解決に取り組んでいる。

 

応募時から貫いた「ピリカらしさ」

資金も人手も足りていない創業時。世の助成金をひたすら調べる中で、SVP東京の存在を知り、200万円という金額に魅力を感じて創業2年目に応募をした。

結果は落選。

しかし、SVPパートナー(注:SVP東京のメンバーのこと)の後押しもあり、翌年に再度応募することとなる。当時の会社の状況は、専任スタッフ2名と、プロボノとして開発やデザインに携わるメンバーが数名。売上は年600万ほど。まだまだ、人手も資金もたりてない状態だった。

 

SVP東京との協働にあたっては、一つ懸念があった。

SVP東京の仕組みでは、一緒に働くパートナーを団体側が選ぶことはできないため、能力やモチベーションの低い人が交じり、チームの優秀さを保てなくなるのでは…と。そのような不安を抱えたまま、一次選考を通過した。

一次選考通過後には、応募団体ごとに仮Vチーム(注:SVP東京が応募団体ごとにつくる支援チームを「Vチーム」と呼び、団体の理念に共感したパートナーによって構成される)が結成される。

仮Vチームと共に、選考通過を目指して議論や資料作りを進めるのだが、お互いにほぼ初対面ということもあり、初回の打ち合わせでは発言や質問を出しづらい場面もあった。しかし、ピリカとして創業以来大切にしてきた議論の文化やミーティングの質はどうしても守りたかった。

そこで、「ピリカではミーティングに出席している限りは発言をしてほしい。心の中に課題や懸念点を抱えているのに発言しないのはピリカでは許容できない」と、会社のスタンスを伝えた。

それは、二次選考でも同様だった。選考のプレゼンでは、

「僕たちは科学を大切にする会社。科学ではなにより“理屈”が大事で、理屈が通れば意見が通る。誰が言うかよりも何を言うかが大事な組織です」

と、あえて言い切った。

感性や感情を重視するパートナーの理解を得づらくなるのでは、という懸念もあったが、結果として自分たちのスタンスをはっきり伝えたことで、理念や活動に共感するパートナーが増え、選考通過に十分な賛同を得ることができた。

 

何から何まで、自らの手を動かすパートナー

無事に選考を通過し、協働がスタートすることとなった。弁護士、会計士、コンサルタントなど、様々な分野のプロフェッショナルが9名ほど集まった。

創業時の会社は毎週状況が変わっていくため、ミーティングを月に1~2回の頻度で行い、売上や資金繰り、採用など、その都度必要なことを議論した。助成金の申請書作成や契約書の確認など、ミーティングの場で発生した業務をそのままお願いしてしまうことも多くあった。

SVP東京から支援を受ける団体に限らず、ボランティアの協力に頼る組織には共通した葛藤がある。組織の中で発生する業務は、全体で見ると重要だが、1つ1つを切り取って見ると、つまらない、退屈な仕事の積み重ねであることも多い。

パートナーの得意分野と合致する専門性の高い仕事が、週末こなせるくらいの丁度良い業務量で発生することは稀だ。最初の数ヶ月はピリカも同じ葛藤を抱えていて、

「無給どころか、お金を払って来てくださっている方に、重要だが面白いとは思えない作業をお願いしてしまって良いものか」

と依頼を躊躇してしまうこともあった。

しかし、ピリカのパートナーはどのような仕事に対しても「なんでも言ってください」「とても勉強になりました!」と言ってくれる。結果として、「こんなことお願いして良いのか」「あれもお願いしてしまおう」と少しずつ頼める仕事の幅が増えていき、最終的には学生アルバイトにお願いするつもりだった仕事までお願いするようになっていった。

例えば、当時ピリカでは画像からゴミを読み取るプログラムを開発していた。画像解析のためには、路上のゴミを撮影し、「これはゴミ」「これはゴミでない」と画像にタグをつけ、コンピュータに学習させる必要がある。ひたすら街を歩いて路上を撮影し、オフィスに戻ってゴミにタグ付けするという、ひたすら地道な作業まで手伝ってもらっていた。

「頭もよく仕事も出来る優秀なパートナーが、単純作業も厭わず自分の手を動かしてくれて、本当に助かった」

と、小嶌氏は話す。

パートナーが担当した業務のマニュアル化や品質管理まで自主的に進めてくれたことも、その後の事業拡大の弾みになった。

 

優秀な仲間と「今のピリカ」をつくりあげる

応募時に抱いていた、「やる気のない人が入ってきたらどうしよう」という懸念はただの杞憂だった。

「僕にとってオールスター級のメンバーに参加してもらえた。お金を払っても得られないようなサポートを、お金を払わずに得ることが出来てしまった」

と小嶌氏は語る。

優秀なパートナーの支えがあったからこそ、事業拡大のペースが上がった。2年間の協働後には売上が3倍にまで伸び、社員やアルバイト、インターン生などパートナー以外の仲間も増えた。

彼らのサポートがあったからこそ、今のピリカがある。

 

「お金の支援がありがたいのはもちろんですが、本当にいい人たちに助けてもらえる可能性が高い。警戒していた僕が言うくらいですから」

と、応募を検討している人に向けて小嶌氏が話す。

「創業時はお金も人手も足りないと思うので、少し早いかなと感じたとしても、応募してみることをオススメします」

と、メッセージをくれた。

 

「科学が大好き。その大好きな科学が生み出してしまった環境問題を、科学の力ですべて解決しようというのがピリカの挑戦。その実現のために、ピリカを世界一の問題解決集団にしたい」

と語る小嶌氏。

今後も「楽しくて、面白くて、優秀なメンバー」と共に進化していくに違いない。